60代男性のダイエットは、食事を極端に減らさず、腹囲と健診結果を確認しながら筋肉を守って動くことが基本です。
厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」では、60〜69歳男性の肥満者(BMI25以上)は35.0%。さらに60〜64歳と65〜69歳では身体活動の公的な目安も変わるため、自分の年齢・体力・健康状態に合わせて進めることが大切です。
60代男性のダイエットはなぜお腹まわりが重要?
「若い頃と同じように食べているつもりなのに、お腹だけ出てきた」
「体重はそれほど増えていないのに、昔のズボンがきつくなった」
60代になると、こんな変化が気になる男性も多いですよね。
厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」の2023年の結果では、BMI25以上の肥満者は男性全体で31.5%でした。
年齢階級別では、20〜29歳23.2%、30〜39歳30.2%、40〜49歳34.3%、50〜59歳34.8%、60〜69歳35.0%、70歳以上29.0%となっています。
つまり60〜69歳男性は、この調査の年齢階級の中で肥満者の割合が最も高かったのです。
もちろん、これは「60代になれば太る」という意味ではありません。
ただ、60代男性にとって体重や腹囲を見直すことが、一部の人だけの問題ではないことは分かりますよね。
腹囲85cmを超えたらメタボなの?
男性のお腹まわりでよく目にするのが「85cm」という数字です。
日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、おへその高さで測定した腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上であることが内臓脂肪蓄積の目安になっています。
ただし、男性の腹囲が85cm以上になっただけで、メタボリックシンドロームと診断されるわけではありません。
診断基準では腹囲の条件に加えて、血清脂質、血圧、血糖の3項目のうち2項目以上が基準に該当することが必要です。
具体的には、中性脂肪150mg/dL以上またはHDLコレステロール40mg/dL未満、収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上、空腹時血糖110mg/dL以上が基準として示されています。
また、該当する脂質異常、高血圧、糖尿病について薬物治療を受けている場合も、それぞれの項目に含まれます。
ですから、「84cmだから健康」「86cmだからすぐメタボ」と腹囲だけで判断するものではないのですね。
腹囲は合否を決める数字ではなく、健診結果や生活習慣を見直すきっかけ。
長年シニア世代の運動サポートに関わってきた私は、60代ではこの受け止め方がとても大切だと感じています。
BMI25以上も「数字だけ」で考えない
BMIは、次の計算式で求められます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
たとえば身長165cm、体重70kgならBMIは約25.7です。
「令和5年国民健康・栄養調査」の60〜69歳男性の肥満者35.0%という数字も、BMI25以上を肥満として集計したものです。
一方、BMIだけでは筋肉と脂肪の割合や、脂肪がどこについているのかまでは分かりません。
そのため60代男性のダイエットでは、BMI・腹囲・健診結果・体重の変化・普段の動きやすさを一緒に確認するのがおすすめです。
「最近ベルトの穴が一つ変わった」「退職後に歩かなくなった」「階段で以前より疲れる」といった変化にも、生活を整えるヒントが隠れていますよ。
60代男性のダイエットでは食事をどう変える?
60代男性の食事で大切なのは、主食を丸ごと抜くような極端な方法ではなく、必要な栄養を確保しながら余分な飲食を減らすことです。
ここは今回、特に強調したいポイントです。
体重を落としたいと思うと、「夕食を抜こう」「ご飯を食べるのをやめよう」と考えがちですよね。
しかし60代から先の暮らしを考えれば、体重を減らすことだけでなく、筋肉や体力を維持する視点も欠かせません。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、たんぱく質の目標量は摂取エネルギーに占める割合として、50〜64歳では14〜20%、65〜74歳では15〜20%と設定されています。
ここからも、60代の食事は単純に「食べる量をできるだけ減らす」のではなく、必要な栄養を取りながら食事全体を整えることが重要だと読み取れます。
まず「余分に足しているもの」を探してみる
最初に確認したいのは、朝・昼・夕の食事だけではありません。
間食、飲み物、晩酌、おつまみ、夜食まで含めて一日を振り返ってみましょう。
- 甘い飲み物を毎日のように飲んでいないか
- 夕食後のお菓子が習慣になっていないか
- 晩酌と一緒におつまみの量が増えていないか
- 食事を抜いた反動で次の食事を食べすぎていないか
- 肉・魚・卵・大豆食品などを食事に取り入れているか
- 野菜や海藻、きのこなどを組み合わせているか
- 「お腹が空いたから」ではなく習慣だけで食べていないか
たとえば夕食の量そのものは多くなくても、その後にお酒、おつまみ、お菓子が続けば、一日の摂取量は変わってきます。
反対に夕食を極端に減らしたために、夜遅く空腹になって何かを食べるようになれば、長く続けるのは難しくなりますよね。
60代は「ご飯を抜く」より食卓の組み合わせを見る
私がおすすめしたいのは、一つの食品を悪者にしないことです。
「ご飯は太りそうだからゼロ」「肉はカロリーがありそうだから食べない」と単純化するのではなく、食事全体を見てみましょう。
たとえば、ご飯などの主食、魚・肉・卵・大豆食品などを使った主菜、野菜などを使った副菜を組み合わせます。
そのうえで、量が多くなっているものや、何となく追加しているものを見直すほうが実践しやすいですよ。
60代では「減らす」だけに意識が向きがちですが、何を残すかも同じくらい重要です。
筋トレを始めたのに、体重を早く落とそうとして食事まで極端に減らしてしまうのは、これから動ける体を目指すという目的と噛み合いません。
なお、糖尿病や腎臓病などで治療中の方は、一般的なダイエット情報をそのまま当てはめないでください。
医師や管理栄養士から食事について指示を受けている場合は、個別の指導を優先しましょう。
60代男性の運動は6,000歩?8,000歩?年齢別に整理
ここは60代男性が特に迷いやすいところです。
60〜64歳では成人の目安である1日約8,000歩、65歳以上では高齢者の目安である1日約6,000歩が基本的な参照ラインになります。ただし、どちらも達成を義務づける数字ではなく、体力や健康状態に応じた調整が必要です。
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人版と高齢者版に分けて身体活動の推奨事項を示しています。
健康日本21(第三次)の歩数目標でも、成人を20〜64歳、高齢者を65歳以上として整理しています。
そのため「60代」という10年間は、一つの基準だけで説明すると分かりにくいのです。
年齢の目安 参照する区分 身体活動の目安
60〜64歳 成人 1日60分以上、約8,000歩以上に相当
65〜69歳 高齢者 1日40分以上、約6,000歩以上に相当
これは、60代のダイエット情報を読むうえで意外に見落とされやすいポイントです。
「60代男性は1日○歩」と一つの数字だけで覚えず、65歳を一つの区切りとして公的な目安を確認すると分かりやすくなります。
ただし、65歳の誕生日を迎えた翌日から8,000歩を6,000歩に減らさなければならない、という意味ではありません。
厚生労働省の高齢者版では、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能なものから取り組むことを基本としています。
さらに体力のある高齢者では、成人と同程度の身体活動を行うことで、さらなる健康増進効果が期待できるとしています。
つまり、年齢は目安を選ぶ入口、実際の運動量を決めるのは現在の体力や健康状態と考えるとよいでしょう。
60〜69歳男性の運動習慣は35.7%
厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」では、「1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人」を運動習慣のある者としています。
男性では20〜29歳26.5%、30〜39歳23.5%、40〜49歳30.1%、50〜59歳25.6%、60〜69歳35.7%、70歳以上46.5%でした。
60代になってから運動を始めようとして、「今さら遅いのでは」と心配する必要はありません。
むしろ大切なのは、昨日までほとんど動いていなかった人が、いきなり8,000歩を歩こうとしないことです。
厚生労働省の成人版・高齢者版のどちらにも共通しているのが、個人差を踏まえ、今より少しでも多く身体を動かすという考え方です。
ウォーキングだけでなく座りっぱなしも見直す
身体活動というと「運動着に着替えてウォーキング」と考えがちですが、日常生活で体を動かすことも含まれます。
近所への用事を歩いて済ませる、買い物で少し多めに歩く、テレビを見続けず途中で立つなど、小さな動きも積み重ねられます。
特に退職などをきっかけに通勤がなくなると、「運動はしていないけれど、以前は毎日駅まで歩いていた」という活動まで一緒に減ることがあります。
これは60代男性のダイエットで見逃しやすい点です。
「運動を新しく始める」だけでなく、以前の生活では自然に行っていた動きを取り戻せないかと考えてみてください。
筋トレは成人・高齢者とも週2〜3日が目安
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人、高齢者ともに筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨しています。
高齢者については、筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせた多要素な運動を週3日以上行うことも推奨されています。
筋トレというと、重いダンベルを持ち上げる姿を想像するかもしれません。
でも、自分の体重を利用する自重トレーニングも筋トレです。
運動経験の少ない方なら、安定した椅子を使ってゆっくり立ったり座ったりするなど、日常動作につながる運動から始める方法もあります。
足元が滑らない環境を整え、痛みを我慢せず行ってくださいね。
筋トレ中に息を止め続けないことも大切です。
膝や腰に強い痛みがある方、心臓や血管の病気などで治療を受けている方、医師から運動を制限されている方は、自己判断で負荷を上げず、医師などの専門家に相談しましょう。
60代男性のダイエット、最初の1週間は何をする?
情報をたくさん読んでも、「結局、明日から何をすればいいの?」と思いますよね。
そこで運動経験が少ない60代男性を想定し、最初の1週間で確認したいことをシンプルにまとめます。
1日目は、体重・腹囲・健診結果を確認します。
腹囲だけで一喜一憂せず、血圧、血糖、脂質など健康診断の結果も一緒に見てください。
2日目は、食べたものと飲んだものを一日だけ書き出します。
食事だけでなく、コーヒーに入れた砂糖、甘い飲み物、晩酌、おつまみ、夕食後のお菓子なども含めます。
「減らさなければ」と考える前に、まず現状を見えるようにするのです。
3日目は、普段の歩数や活動量を確認します。
スマートフォンや歩数計など、普段使っているもので構いません。
8,000歩や6,000歩に届いたかどうかより、「自分は普段どのくらい動いているのか」を知ることを優先しましょう。
4日目は、一つだけ余分な飲食を見直します。
たとえば毎日の甘い飲み物を無糖のお茶にする、夕食後に習慣だけで食べていたお菓子を見直す、といった具合です。
食事全体を一気に半分にする必要はありません。
5日目は、今より少し多く歩いてみます。
普段ほとんど歩いていない方が、初日から公的な目安を達成しようと無理をする必要はありません。
「買い物で少し遠回りする」「食後に短時間歩く」など、翌日もできそうな増やし方を選びましょう。
6日目は、無理のない筋トレを試します。
安定した椅子からの立ち座りなど、体調に合った動きを選びます。
回数を競わず、「痛みなく安全にできるか」を確かめる日と考えてください。
7日目は、体重より生活を振り返ります。
「何kg減ったか」だけではなく、「甘い飲み物を減らせた」「昨日より歩いた」「筋トレができた」といった行動を確認します。
この1週間で急いで結果を出す必要はありません。
最初の目的は、自分が太りやすくなった原因を推測できる材料を集め、続けられる変更を一つ見つけることです。
長年、地域の健康教室でシニア世代の運動をサポートしてきた経験からも、「完璧な計画を作って三日で疲れる」より、「小さく始めて生活に定着させる」ほうが取り組みやすいと感じます。
60代男性のダイエットをどう考える?筆者の考察
ここからは、シニア世代の体づくりを調べ、地域で運動サポートに関わってきた筆者としての私見です。
今回のテーマで特に重要だと感じるのは、「60代」という言葉だけで一つの運動基準にまとめないことです。
60歳と69歳では9年の差があります。
さらに公的な身体活動の目安を見ると、60〜64歳は成人、65歳以上は高齢者という区分を意識する必要があります。
一方で、実際の体力は誕生日で突然変わるものではありませんよね。
64歳でほとんど運動していない人もいれば、68歳で毎日元気に歩いている人もいます。
だから私は、「年齢で目安を選び、体力で実行量を調整する」という二段階で考えるのが分かりやすいと思っています。
これなら8,000歩と6,000歩のどちらが正解なのかと迷い続ける必要もありません。
「減量」と「動ける体」を同じ方向に向ける
60代のダイエットでは、体重計の数字だけを小さくすることが目的になってしまうと、食事を極端に減らす方向へ進みやすくなります。
けれども60代から先に必要なのは、買い物へ行く、階段を上る、旅行を楽しむ、自分の足で外出するといった日常を支える体でもあります。
厚生労働省が成人、高齢者の双方に筋トレを週2〜3日推奨していることを考えても、体重管理と筋肉を使う習慣は切り離さないほうがよいと私は考えます。
ダイエットを車に例えるなら、余分な荷物を降ろしながら、これから走るためのエンジンは大切にするイメージです。
余分な脂肪を増やしにくい食生活と、筋肉を使い続ける生活を同時に作る。
これが60代男性のダイエットを考えるときの、大切な軸ではないでしょうか。
お腹まわりは「生活から届いた通知」と考える
ベルトの穴が変わった。
昨年まで履けたズボンがきつくなった。
健康診断で腹囲を指摘された。
そんな変化があったら、「明日から食事を半分にするぞ」と慌てる前に、生活から通知が届いたと考えてみてください。
退職して歩く時間が減っていないでしょうか。
座ってテレビを見る時間が増えていないでしょうか。
夕食後のお菓子や晩酌のおつまみが、いつの間にか習慣になっていないでしょうか。
腹囲は単なる見た目の数字ではなく、暮らしを振り返る入口にもできます。
私はこの視点を持つことで、「何kg痩せるか」だけではなく、「なぜ最近お腹まわりが変わったのか」という、より具体的な改善点を見つけやすくなると考えています。
まとめ|60代男性のダイエットは食事・運動・腹囲をセットで
60代男性がお腹まわりを整えたいなら、食事を極端に削るのではなく、余分な飲食を見直し、必要な栄養を確保しながら身体活動と筋トレを組み合わせることが基本です。
厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」では、60〜69歳男性の肥満者(BMI25以上)は35.0%、運動習慣のある男性は35.7%でした。
また身体活動については、60〜64歳では成人の1日60分以上・約8,000歩以上、65歳以上では高齢者の1日40分以上・約6,000歩以上が基本的な目安になります。
ただし、これは達成できなければ意味がない数字ではありません。
現在ほとんど運動していないなら、まず今より少し動くことから始めてみましょう。
食事も同じです。
いきなりご飯を抜いたり食事量を大幅に減らしたりする前に、甘い飲み物、間食、夜食、晩酌のおつまみなど、一日の中で無意識に増えているものがないか確認してみてください。
そして体重だけではなく、腹囲、健診結果、歩数、筋トレ、食事内容を一緒に振り返ってみましょう。
60代のダイエットは、体重計の数字だけを小さくする競争ではありません。
数か月後だけでなく、数年後も元気に歩き、好きな場所へ出かけられる体を目指して、明日も続けられる小さな一歩から始めてみましょう!
よくある質問
60代男性は腹囲85cmを超えたらメタボですか?
腹囲85cm以上だけでメタボリックシンドロームと診断されるわけではありません。
日本の診断基準では、男性の腹囲85cm以上に加え、血清脂質・血圧・血糖の3項目のうち2項目以上が基準に該当することが必要です。該当する項目の薬物治療も考慮されるため、腹囲だけで自己判断せず健診結果と合わせて確認しましょう。
60代男性は1日6,000歩と8,000歩のどちらが目安ですか?
公的な区分を基準に整理すると、60〜64歳は成人として約8,000歩以上、65〜69歳は高齢者として約6,000歩以上に相当する身体活動が一つの目安です。
ただし厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、個人差を踏まえて強度や量を調整することを重視しています。体力のある高齢者では成人と同程度の活動も選択肢になるため、年齢だけで歩数を固定しないことが大切です。
60代男性のダイエットに筋トレは必要ですか?
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人と高齢者の双方に筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨しています。
ウォーキングだけに偏らず、体調に合わせて筋肉を使う運動も取り入れてみましょう。持病がある方、膝や腰などに強い痛みがある方、医師から運動制限を受けている方は、始める前に医師などの専門家へ相談してください。
高橋陽子|シニアフィットネス・ライター

