60代ダイエットの基本は、食事を極端に減らすのではなく、筋肉と体力を守りながら余分な体脂肪を減らすことです。
特に60代は、60〜64歳と65〜69歳で国の栄養・身体活動の目安が一部変わります。体重だけを追わず、年齢と体調に合った食事と運動を組み合わせることが、安全に続ける第一歩です。
60代ダイエットは何から始める?まずBMIと体調を確認
60代ダイエットを始めるなら、最初にすることは「食べる量を減らす」ことではありません。
現在の体重、最近の体重変化、食欲、体力、持病などを確認し、本当に減量が必要なのかを考えることが先です。
肥満の判定でよく使われるのがBMIです。
BMIは次の計算式で求めます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
たとえば、身長165cm、体重70kgなら、
70÷1.65÷1.65=約25.7
となります。
日本肥満学会では、BMI25以上を「肥満」と判定しています。
ただし、ここで「25を超えたら、とにかく体重を落とさなければ」と考えないでください。
60代で特に重要なのは、BMIの上限だけでなく、下限にも目を向けることです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は2025年度から2029年度まで使用される基準で、目標とするBMIの範囲を、50〜64歳では20.0〜24.9、65〜74歳では21.5〜24.9としています。厚生労働省+1
つまり、「60代」という同じ年代でも、60〜64歳と65〜69歳では目標BMIの下限が異なるのです。
これは見逃しやすいポイントですよね。
年齢 厚生労働省が示す目標BMIの範囲
50〜64歳 20.0〜24.9
65〜74歳 21.5〜24.9
75歳以上 21.5〜24.9
65歳以上で下限が21.5に設定されている背景には、生活習慣病だけでなく、低栄養やフレイルの予防にも配慮する必要があることがあります。
厚生労働省の健康情報サイトでも、高齢者では体重を厳格に減らすことだけを考えるのではなく、食事の質や筋肉量を維持することが重要だと説明されています。低栄養は、筋力や活動量が落ちていくフレイルに関わる重要な要因の一つです。健康日本21
ですから、BMI25以上という数字だけを見て、自己流で食事量を大幅に減らすのはおすすめできません。
たとえば以前より急に体重が減った、食欲が落ちた、疲れやすくなった、歩く速度が遅くなったという場合は、「痩せる」より先に健康状態を確認したほうがよいケースがあります。
60代ダイエットでは、目標も少し変えてみましょう。
「5kg痩せる」だけでなく、
- 階段を今より楽に上れるようになる
- 旅行で長く歩ける体を保つ
- 買い物の荷物を持って歩けるようにする
- 好きな服を気持ちよく着る
- 疲れにくい体を目指す
といった生活の目標を一緒に決めておくと、体重の数字だけに振り回されにくくなります。
個人的には、60代からのダイエットは「体を小さくする競争」ではなく、「これからも自分の足で楽しめる時間を増やす準備」と考えるのが合っていると思います。
なお、糖尿病、高血圧、心臓病、腎臓病などで治療中の方、服薬している方、膝や腰などに痛みがある方、短期間で体重が大きく増減した方は、食事や運動を大きく変える前に医師や管理栄養士などへ相談してください。
60代ダイエットの食事は?「減らす」より筋肉を守る食べ方へ
60代の食事で意識したいのは、必要な栄養まで削らないことです。
若い頃と同じ感覚で「夕食を抜く」「ご飯を食べない」「野菜だけで済ませる」といったダイエットをすると、体脂肪と一緒に筋肉まで減らしてしまう可能性があります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、女性のたんぱく質の推奨量は50〜64歳で1日50g、65〜74歳でも1日50gです。
また、たんぱく質が1日の総エネルギーに占める目標量は、50〜64歳で14〜20%、65〜74歳では15〜20%とされています。厚生労働省
もちろん「50g食べれば誰でも痩せる」という意味ではありません。
体格、活動量、病気の有無などで適切な食事内容は変わりますが、少なくともダイエット中だからといって、たんぱく質をむやみに削らないことは大切です。
取り入れやすい食品には、魚、肉、卵、牛乳・乳製品、大豆製品などがあります。
一度の夕食で大量に食べるというより、朝・昼・夕に分けて取り入れるほうが、日々の食事として続けやすいでしょう。
厚生労働省の高齢者向け情報でも、1日1〜2食に偏るのではなく、3食を基本にしながら、それぞれの食事でたんぱく質を含む食品を取ることが筋肉量の維持につながると説明されています。健康日本21
難しく考えなくても大丈夫ですよ。
たとえば朝がトーストとコーヒーだけなら、ゆで卵やヨーグルトを加える。
昼がうどんだけなら、卵や豆腐、肉、魚などのおかずを添える。
夕食なら、魚や肉を主菜にして、野菜やきのこ、海藻などを副菜にする。
このように「何を減らすか」だけでなく「何が足りないか」を見ることが60代の食事改善では大切です。
そのうえで、体脂肪を増やしやすい習慣があれば少しずつ見直してみましょう。
- 空腹ではないのに毎晩お菓子を食べる
- 甘い飲料を水代わりに飲む
- 揚げ物が何日も続く
- 夜遅くにまとまった量を食べる
- 食事を抜いた反動で夕食を食べすぎる
大切なのは、全部を禁止しないことです。
「お菓子は二度と食べない」と決めるより、「毎日だった間食を週に数回にする」「量を先に小皿へ出す」など、明日も続けられる変更のほうが現実的ですよね。
60代の体づくりは短期間の我慢大会ではありません。
必要なものは残し、余分になっている習慣だけを少し整理する。
私は、この考え方のほうが年齢を重ねてからのダイエットには向いていると考えます。
60代の糖質制限は必要?主食を完全に抜かないほうがよい理由
60代ダイエットで「ご飯をやめたほうが痩せますか?」という疑問を持つ方は少なくありません。
結論からいえば、健康な人が自己流で主食をすべて抜く必要はありません。
厚生労働省の2025年版食事摂取基準では、炭水化物が総エネルギーに占める目標量は、50〜64歳も65〜74歳も50〜65%です。厚生労働省
これは「ご飯をたくさん食べればよい」という話ではありません。
一方で、国の基準が炭水化物をゼロにする考え方ではないことは、知っておきたいポイントです。
糖質を多く含むご飯、パン、麺類などは、体を動かすエネルギー源になります。
食事量を急激に減らしてエネルギーそのものが不足すると、運動を続けにくくなり、結果として活動量が低下する可能性があります。
65歳以上では、体重を減らしすぎることによる低栄養にも注意が必要です。
厚生労働省の高齢者向け情報では、エネルギーを確保するために米、パン、麺などの主食も取り入れることが勧められています。健康日本21
それでは、60代が見直すなら何がよいのでしょうか。
私は「炭水化物をゼロにする」より、食べ方全体を見るほうが現実的だと思います。
たとえば、ご飯は普通に食べている一方で、甘い菓子パン、クッキー、ジュース、夜のお菓子が毎日重なっているなら、まずそちらを整理する方法があります。
主食を一切抜いて空腹を我慢し、その反動で夕方からお菓子を食べてしまうようでは、本末転倒ですよね。
また、血糖値の管理が必要な糖尿病の方などは事情が異なります。
医師や管理栄養士から炭水化物量について指導を受けている場合は、一般的なダイエット情報より、個別に受けている医療上の指示を優先してください。
60代ダイエットの運動量は?60〜64歳と65歳以上で目安が違う
60代の運動で特に知っておきたいのが、60代全員に同じ数字を当てはめるわけではないということです。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人と高齢者で目安を分けています。
成人では、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上、約8,000歩以上に相当する量が目安です。
一方、高齢者では、3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上、具体的には歩行または同程度以上の身体活動を1日40分以上、約6,000歩以上行うことが推奨されています。健康日本21+1
60代に置き換えると、60〜64歳は成人版、65歳以上では高齢者版がひとつの目安になります。
ここは「60代ダイエット」で一括りにすると見落としやすい点です。
ただし、6,000歩や8,000歩は「達成できなければ意味がないノルマ」ではありません。
厚生労働省も、高齢者については個人差を踏まえて強度や量を調整し、推奨量を満たせなくても、今より少しでも多く体を動かすことを勧めています。厚生労働省+1
ですから、普段2,000歩程度の人が「明日から6,000歩」と急に増やす必要はありません。
まず10分歩く。
買い物のときに少し店内を多く歩く。
座っている時間の途中で立つ。
近距離なら歩ける日は歩く。
そんなところから始めてよいのです。
さらに見逃せないのが筋力トレーニングです。
厚生労働省の2023年ガイドは、高齢者に筋力トレーニングを週2〜3日、筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせた多要素な運動を週3日以上行うことを推奨しています。厚生労働省
筋トレというと、重いバーベルを持ち上げる姿を想像するかもしれません。
でも、運動経験が少ない方なら、椅子からゆっくり立ち上がる動きなど、身近な動作も入り口になります。
太ももやお尻などの筋肉は、立つ、歩く、階段を上るといった日常生活に関わります。
60代ダイエットで筋肉を守ることは、単に見た目を引き締めるためではなく、これからの生活を支える足腰を残すためという意味が大きいのです。
もちろん、「1日40分だから痛くても歩かなければ」と考える必要はありません。
厚生労働省は、身体機能が低下している高齢者では転倒などへの安全配慮が必要とし、慢性疾患や運動器の痛みなどがある場合には事前に医師などへ相談するよう示しています。健康日本21
膝、腰、股関節などに痛みがある方は、痛みを我慢して歩数を増やすのではなく、自分に合う運動を専門家と一緒に考えてくださいね。
60代ダイエットを成功させるには?体重以外の変化も記録する
60代ダイエットでは、体重だけを成功の基準にしないことをおすすめします。
体重計に毎日乗って一喜一憂するより、「生活がどう変わったか」まで記録するほうが、筋肉と体力を守るダイエットに合っています。
たとえば週に一度、次のような項目を振り返ってみましょう。
- 体重やウエスト周囲
- 歩いた日数や時間
- 椅子から立つ動作が楽になったか
- 階段で以前より疲れにくくなったか
- 食事を3食整えられた日
- 魚・肉・卵・大豆製品などを食べられたか
- 睡眠や疲労感に大きな変化がないか
体重が1週間動かなかったとしても、以前より15分歩けるようになったなら、それは無視したくない変化です。
反対に、体重が急に落ちたのに、だるくて外出したくない、食欲がない、力が出ないという状態なら、単純に「ダイエット成功」とは言えませんよね。
この視点は、65歳以降になるほど重要になります。
厚生労働省は、低栄養がフレイルにつながる重要な要因であると説明しています。フレイルでは体重減少だけでなく、疲れやすさ、活動量低下、歩行速度低下、筋力低下なども関係します。健康日本21
だからこそ、60代のダイエットは「減った体重」だけを見るのではなく、「残せた筋力」「増えた活動量」「楽になった日常動作」にも目を向けてほしいのです。
もう一つ意識したいのが、座っている時間です。
厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023では、成人、高齢者のどちらについても、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することが示されています。健康日本21+1
「運動する時間が取れない」と落ち込むより、テレビを見ている途中で一度立つ、家事で少し動く、買い物へ出るなど、生活の中で座る時間を区切ることから始めてもよいのです。
私は60代のダイエットで大切なのは、毎日100点を取ることではなく、ゼロの日を少しずつ減らすことだと考えています。
10分歩けた日、朝食に卵を足せた日、間食を一度見送れた日。
そんな小さな丸をカレンダーにつけていくほうが、「今日はできなかった」と自分を責め続けるより、ずっと長く続けやすいですよ。
60代ダイエットで大切なのは「軽い体」より「軽やかに動ける体」
ここからは、シニア世代の体づくりについて情報を読み解いてきた筆者としての考察です。
60代ダイエットで避けたいのは、短期間で体重を落とすことを優先するあまり、食事量、筋肉、体力まで一緒に減らしてしまうことだと考えます。
60代では「何kg痩せたか」だけでなく、痩せたあとも元気に動けるかまで含めて成功を考える必要があります。
厚生労働省の2025年版食事摂取基準が65〜74歳の目標BMI下限を21.5としていること、高齢者の低栄養予防で筋肉量の維持を重視していること、身体活動ガイドで筋トレを週2〜3日勧めていることは、それぞれ別の数字に見えます。厚生労働省+2健康日本21+2
しかし並べてみると、共通する方向が見えてきます。
それは、「年齢を重ねたら、ただ細くするのではなく、動ける体を守る」という考え方です。
私はここに、60代ダイエットの一番大きな特徴があると思います。
20代や30代の頃に「1か月で何kg減らす」といったダイエットを経験した方ほど、同じやり方を再現しようとするかもしれません。
けれど60代では、昨日より極端に食べないことより、来年も歩ける脚を残すことのほうが大切です。
そのため、まずやめたいのは次のような「頑張りすぎ」です。
毎日1万歩に届かなければ失敗と思うこと。
主食を完全に抜かなければ痩せないと思うこと。
1週間で結果を出そうとすること。
体重が減らない日はすべて無駄だったと考えること。
国の基準ですら、年齢や個人差を考慮し、推奨量に届かなくても少しでも体を動かすことを勧めています。
であれば、自分だけに極端なノルマを課す必要はありません。
60代の体づくりは、100メートル走ではなく、これから先の暮らしへ続く長い道のりです。
速い人と競うより、「このペースなら明日も歩ける」と思える歩幅を選びましょう。
そして目標は、「あと3kg」だけでなくてもよいのです。
旅行先でたくさん歩きたい。
孫と公園へ出かけたい。
友人と買い物を楽しみたい。
好きな服を心地よく着たい。
自分の足でできることを、できるだけ長く残したい。
そんな目的があれば、食事も運動も「痩せるための罰」ではなく、これからの楽しみを守る準備になります。
ダイエットは人生から楽しみを減らすためではなく、これから楽しめることを減らさないための体づくり。
60代からは、そんなふうに捉えてみてはいかがでしょうか。
60代ダイエットの始め方まとめ
60代ダイエットは、極端な食事制限や急な運動から始める必要はありません。
まずBMIや最近の体重変化、食欲、体力、持病などを確認し、減量が本当に必要かを考えましょう。
特に覚えておきたいのは、厚生労働省の2025年版食事摂取基準で、目標BMIが50〜64歳では20.0〜24.9、65〜74歳では21.5〜24.9とされていることです。65歳以降は、太りすぎだけでなく低栄養やフレイルにも注意が必要になります。厚生労働省+1
食事では、主食を完全に抜いたり、野菜だけにしたりせず、魚、肉、卵、大豆製品などからたんぱく質を取り入れましょう。
運動では、60〜64歳と65歳以上で公的な目安が異なります。高齢者版では、歩行などの身体活動を1日40分以上、約6,000歩以上に相当する量としながらも、達成できない人も今より少しでも動くことが勧められています。筋トレの目安は週2〜3日です。健康日本21
そして何より大切なのが、体重だけを成功のものさしにしないことです。
「今日は10分歩いた」「朝食に卵を加えた」「座りっぱなしの時間を減らした」。
そんな小さな変化でも、明日、来月、来年へ続けば大きな意味を持ちます。
年齢を理由に体づくりを諦める必要はありません。
でも、年齢を無視して若い頃と同じ無理をする必要もありませんよ。
軽い体だけではなく、軽やかに動ける体を目指す。
それを60代ダイエットの新しいゴールにして、今の自分にできる一歩から始めてみましょう!
よくある質問
60代はBMI25以上なら必ずダイエットしたほうがいいですか?
BMI25以上は日本肥満学会の肥満判定の目安ですが、数字だけで自己判断して大幅な減量を始めるのは避けましょう。
特に65歳以降は低栄養やフレイルへの配慮も必要です。持病、検査値、最近の体重変化、筋力や食欲などを含め、必要に応じて医師や管理栄養士へ相談してください。
60代ダイエットでは1日何歩歩けばいいですか?
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者について歩行などを1日40分以上、約6,000歩以上に相当する身体活動が目安として示されています。健康日本21
ただし、これはノルマではありません。運動習慣がない方は短時間から始め、今より少しでも活動量を増やすことを優先しましょう。
60代はご飯を抜いたほうが早く痩せますか?
主食を完全に抜く方法を自己流で続ける必要はありません。
厚生労働省の2025年版食事摂取基準では、50〜64歳、65〜74歳とも炭水化物の目標量は総エネルギーの50〜65%です。厚生労働省
ご飯だけを敵にせず、間食、甘い飲み物、食事量、活動量など生活全体を見直しましょう。糖尿病などで食事指導を受けている場合は、その指示を優先してください。
シニアフィットネス・ライター 高橋陽子

