50代・60代のダイエットは、体重を急いで落とすより、筋肉を守りながら食事と運動を無理なく続けることが大切です。
50代では更年期によるホルモン変化への対応がポイントになり、60代ではさらに筋肉量や体力の低下を意識した「減らしすぎないダイエット」が重要になります。
50代・60代のダイエットは何が違う?
「50代になって急に痩せにくくなった」「60代になったら、食事を減らしてもお腹まわりが変わらない」。そんな声をよく耳にします。
若いころと同じように食事量だけを減らしても思うような結果につながらないのは、意志が弱いからではありません。年齢とともに筋肉量、活動量、基礎代謝、ホルモン環境などが変化するため、ダイエットの考え方も変える必要があるのです。
2021年6月5日に公開された、京都大学名誉教授の森谷敏夫先生による50代・60代向けダイエットの解説では、加齢によって太りやすくなる主な理由として、運動量や筋肉量の低下、基礎代謝量の低下、エネルギー収支の変化、女性ホルモンであるエストロゲンの低下が挙げられています。
森谷先生は1950年兵庫県生まれで、1980年に南カリフォルニア大学大学院博士課程を修了。京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを経て京都大学名誉教授となり、応用生理学やスポーツ医学を専門としています。
つまり、50代・60代ダイエットでは単純に「食べる量を減らす」のではなく、動く・筋肉を守る・必要な栄養を摂るという3方向から考えることが基本になります。
50代と60代にも違いがあります。
50代女性では、更年期を迎えてエストロゲンが大きく変動・低下する時期と重なる人が多く、お腹まわりなどの脂肪が気になりやすくなります。
一方、60代になると、更年期そのものへの対応だけではなく、加齢や活動量低下に伴う筋肉量の減少をより強く意識したい年代になります。
そのため私は、50代を「体の変化に合わせてダイエット方法を切り替える年代」、60代を「筋肉と生活機能を守りながら体重を整える年代」と考えると分かりやすいと思っています。
もちろん年齢だけで一律に区切れるわけではありません。体力、持病、運動習慣、体格などによって個人差が大きいことも忘れないでくださいね。
なぜ50代・60代になると痩せにくく感じるの?
大きなポイントになるのが、1日に使うエネルギーの変化です。
参考記事では、1日の総エネルギー消費量について、おおむね次の3つに分類しています。
- 基礎代謝:約60~70%
- 生活活動代謝:約20~30%
- 食事誘発性熱産生:約10%
基礎代謝とは、呼吸したり心臓を動かしたり、体温を維持したりするために必要なエネルギーです。じっとしていても消費されるエネルギー、と考えると分かりやすいですね。
生活活動代謝には、ウォーキングやジョギングだけでなく、掃除、洗濯、買い物、通勤、階段の上り下りなど日常生活の動きも含まれます。
そして食事誘発性熱産生(DIT)は、食事を摂ったあと、消化や吸収などによってエネルギー消費量が増えることを指します。
50代・60代では、このうち「基礎代謝」と「生活活動」の両方を意識することが重要です。
筋肉量の減少が大きなポイント
森谷先生は参考記事の中で、筋肉は使わない状態が続けば減っていくと説明し、「1年に1%」という数字も示しています。
厚生労働省のe-ヘルスネットをもとにした同記事の説明では、高齢者の基礎代謝量は成人より平均して5%程度低く、その要因の一つとして筋肉量の低下が挙げられています。
また、基礎代謝を臓器別に見ると、骨格筋、肝臓、脳がそれぞれ約2割を占め、3つを合わせると全身のおよそ6割になるとされています。
ここで大切なのは、「年齢が上がったから何をしても痩せない」と考えないことです。
加齢そのものを止めることはできませんが、筋肉を使う、歩く、家事などで動く、食事内容を整えるといった部分は自分で変えられます。
私は地域の運動サポートに長く関わってきましたが、運動というと「毎日ジムに通わなければ」と身構える方が少なくありません。
でも、シニア世代ではむしろ「今日は10分歩けた」「昨日より階段を使った」という小さな積み重ねを途切れさせないことが大切だと感じています。
50代・60代ダイエットの運動は何をすればいい?
50代・60代のダイエットでは、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせるのが基本です。
有酸素運動はエネルギー消費を増やす役割、筋トレは筋肉を維持・増強する役割があります。どちらか一方だけではなく、目的の違う2種類を無理のない範囲で取り入れてみましょう。
ウォーキングは「速さ」より続けられるかを見る
始めやすい有酸素運動といえば、やはりウォーキングですよね。
参考記事で森谷先生は、1km歩く場合と1km走る場合について説明し、同じ時間ならランニングのほうが消費エネルギーは大きくなるものの、短時間で疲れてやめてしまうより、長くウォーキングできるほうがよいという趣旨を述べています。
体重50~60kg程度の人の場合、時速4kmで1時間歩くと約150~190kcal、時速5kmなら約210~250kcalを消費するという目安も紹介されています。
ただ、数字だけを見て「毎日1時間歩かなきゃ」と思わなくて大丈夫ですよ。
昼休みに10分歩く、買い物で少し遠回りする、エスカレーターではなく階段を選ぶなど、生活の中の活動量を増やす方法も立派な運動です。
60代ほど「筋肉を落とさない」視点を持ちたい
50代・60代ダイエットで見落としたくないのが筋トレです。
ウォーキングは素晴らしい運動ですが、筋肉に十分な負荷を与えるには筋力トレーニングも必要になります。
参考記事では、大きな筋肉として腹部、背中、お尻、太ももなどを挙げ、とくにお尻と太ももを含む下半身の筋肉を優先して鍛える方法としてスクワットを紹介しています。
森谷先生は、スクワットが難しい人なら1回から始めてもよいとしています。
これは50代・60代の運動で、とても大事な考え方だと私は思います。
「30回できないから筋トレにならない」のではありません。
1回から始めて、体調を確認しながら少しずつ増やす。そのほうが運動経験の少ない方には現実的です。
参考記事では、自重トレーニングについて、できる回数から始める、週3回程度を目安に習慣化する、使っている筋肉を意識する、呼吸を止めないといったポイントも紹介されています。
ただし、60代では特に「回数を増やすこと」だけを目標にしないでください。
膝や腰に痛みがある方、骨粗しょう症などを指摘されている方、心臓や血圧などに持病がある方は、自己判断で負荷の強い運動を始めず、医師や運動の専門家に相談することが大切です。
50代・60代ダイエットの食事は「減らす」より「整える」
食事については、50代と60代に共通して極端に食べない方法を避けることが重要です。
若いころは「夕食を抜いたら体重が落ちた」という経験があるかもしれません。しかし、筋肉量を維持したい年代で極端に摂取エネルギーを減らすと、脂肪だけでなく筋肉まで失う可能性があります。
筋肉が減れば活動量も落ちやすくなります。
ですから、体重計の数字だけを減らすのではなく、「必要なものは食べながら余分を見直す」という発想に変えてみましょう。
タンパク質は毎食を意識する
参考記事で森谷先生が特に強調しているのがタンパク質です。
筋肉は常に合成と分解を繰り返しているため、夕食だけではなく朝食や昼食にもタンパク質を取り入れることが勧められています。
同記事では、筋肉を維持する目安として体重1kgあたりタンパク質1~1.2gを紹介しています。体重50kgなら1日50~60gという計算です。
ただし、必要量は年齢、体格、活動量、健康状態などによって異なります。腎臓病などでタンパク質量の調整を指示されている方は、一般的な数字をそのまま当てはめず、医師や管理栄養士の指示を優先してください。
卵、魚、肉、大豆製品、乳製品など、普段の食事から摂れるものはたくさんあります。
プロテインを飲まなければ筋肉がつかないわけでもありません。参考記事でも、プロテインドリンクは補助的なものと考え、普段の食事からタンパク質を摂る考え方が示されています。
炭水化物を極端に抜かない
もう一つ注目したいのが、炭水化物を必要以上に怖がらないことです。
参考記事で森谷先生は、糖質は重要なエネルギー源であり、医師の管理下で糖質制限を行うケースは別として、過度に制限しないよう説明しています。
短期間で体重を落としたくなると、ご飯やパン、麺類をすべてやめたくなるかもしれません。
しかし、50代・60代では「体重を早く落とすこと」以上に、「必要な栄養を確保しながら長く続けられること」が大切です。
炭水化物をゼロにするのではなく、食べる量や組み合わせ、間食や高脂肪食品を含めた食生活全体を見るほうが現実的でしょう。
脂質と間食は「禁止」ではなく量を見直す
参考記事では、ダイエット中には高脂肪の食品を控えめにすることも提案されています。
脂質は1gあたり9kcalで、炭水化物とタンパク質はいずれも1gあたり4kcalです。そのため、脂質の多い食品は少量でもエネルギー量が高くなりやすい特徴があります。
だからといって、脂質を完全に排除する必要はありません。
たとえば「毎日食後にお菓子を食べていたなら回数を減らす」「大袋から直接食べず、小皿に出す」など、小さな調整のほうが続けやすいですよね。
私は、ここが50代・60代ダイエット成功の隠れたポイントだと考えています。
禁止する食品を増やすより、「続けても苦しくない変更」を増やす。
これは地味ですが、数カ月、数年という長い目で見ると大きな差になっていきます。
50代と60代で目標の立て方をどう変える?
50代と60代では、同じ「ダイエット」という言葉でも、目標設定を少し変えたほうがよいでしょう。
50代では、更年期による体調のゆらぎを考慮しながら、運動量を取り戻し、筋肉を維持する習慣を作ることがポイントです。
60代では、それに加えて「日常生活を元気に送れる筋力を守る」という視点をさらに強く持ちたいところです。
体重だけを評価基準にすると、筋トレを始めたのに「体重が減らないから失敗」と判断してしまうことがあります。
そこで私がおすすめしたいのが、体重以外の変化も記録することです。
- 以前より長く歩けるようになった
- 階段が少し楽になった
- スクワットが1回から5回になった
- 間食の回数が減った
- 朝食にタンパク質を加えられた
- ウエストまわりや服の着心地が変わった
こうした変化も、体づくりが前に進んでいるサインになります。
これは特に60代のダイエットで大切です。
体重だけを急激に減らして筋肉まで失ってしまうより、「動ける体を保ちながら余分な脂肪を減らす」という方向を目指すほうが、これからの生活を考えたときに意味があります。
50代・60代で避けたい短期集中ダイエット
参考素材には「2週間で5kg」といった短期減量を扱う記事もありますが、シニア世代に一律で勧められる目標ではありません。
短期間に体重が大きく変化した場合、そのすべてが体脂肪の減少とは限らず、水分や体内のグリコーゲンなどの変化も含まれます。
とくに50代・60代では、極端な食事制限による筋肉量の減少、栄養不足、体調不良などにも注意が必要です。
「早く5kg減らす」よりも、3カ月後にも続いている習慣を一つ作る。
私は、この考え方のほうが50代・60代には合っていると思います。
50代・60代ダイエットを無理なく続ける方法は?
ダイエットを始めると、初日に張り切って「毎日1時間歩く」「お菓子禁止」「スクワット30回」と全部変えたくなりますよね。
でも、長年運動をサポートしてきた立場から見ると、最初から完璧を目指すより最低ラインを驚くほど低く設定することが継続のコツです。
たとえばウォーキングなら、「30分歩かなければ意味がない」ではなく、「今日は10分でも外に出る」。
スクワットなら「30回」ではなく、「まず1~5回」。
食事なら「完璧な献立」ではなく、「朝食に卵や納豆などを一品加える」。
こうして始めれば、体調がよい日は自然にもう少しできますし、疲れた日でも習慣そのものを途切れさせにくくなります。
「運動時間」だけでなく生活活動を増やす
もう一つ、50代・60代だからこそ意識したいのが日常生活の活動量です。
買い物、掃除、洗濯、庭仕事、徒歩での移動なども身体活動です。
「運動する時間がないから今日はゼロ」ではなく、座っている時間を少し短くして、こまめに立ったり歩いたりする。
この考え方なら、スポーツが苦手な方にも取り入れやすいですよね。
体重より「継続できた日」を数える
私は50代・60代のダイエットでは、体重を毎日の成績表にしすぎないことも大切だと考えています。
体重は水分量や食事、排便などによって日々変動します。
そこで、「ウォーキングできた」「筋トレできた」「三食を整えられた」といった行動にも丸をつけてみましょう。
体重計は結果を見る道具ですが、習慣の記録は結果につながる行動を見る道具です。
年齢を重ねてからのダイエットは、この「行動を育てる」という視点を持つだけで、ずいぶん気持ちが楽になりますよ。
私が考える50代・60代ダイエットの本当の違い
ここからは、シニア世代の運動を長く見てきた筆者としての私見です。
50代と60代の最大の違いは、「どのダイエット法が効くか」という単純な話ではなく、何を守りながら痩せるかの優先順位が変わってくることだと私は考えています。
50代では、更年期によるホルモン環境の変化や、それまでに積み重なった運動不足をきっかけとして、体型が大きく変わったと感じる人が少なくありません。
この段階で食事と運動を見直し、「筋肉を使う生活」に戻しておくことは、その後の60代にもつながります。
そして60代では、体重を減らすことだけではなく、歩く、立つ、階段を上る、買い物をするなど、毎日の暮らしを支える筋肉を守ることがますます重要になります。
だから私は、60代で「昔の体重に戻りたい」と相談されたら、数字だけを見るのではなく、「今より元気に動ける体になりたい」という目標も一緒に持ってほしいと思います。
50代・60代のダイエットは、若いころの自分との競争ではありません。
今の自分の体に必要なものを残し、余分なものを少しずつ減らしていく作業なのです。
食事を極端に削って体重を落とすことは、一見すると近道に見えます。
けれども筋肉まで削ってしまえば、これから先の生活に必要な「動く力」まで小さくしてしまう可能性があります。
その意味で、シニア世代のダイエットは「体重を軽くする計画」であると同時に、「これからも動ける体を作る計画」と捉えるのがよいのではないでしょうか。
もちろん、糖尿病、高血圧、腎臓病、心疾患、関節疾患などで治療中の方や、医師から運動・食事について指示を受けている方は、その指示が優先です。
運動中の胸痛、強い息切れ、めまい、いつもと違う痛みなどがあれば無理に続けず、必要に応じて医療機関へ相談してください。
まとめ|50代・60代ダイエットは「筋肉を守って続ける」
50代・60代のダイエットでは、若いころのような短期集中型ではなく、有酸素運動、筋トレ、バランスのよい食事を無理なく継続することが基本になります。
50代は更年期を含む体の変化に合わせて生活を見直す時期。60代ではさらに、体重だけでなく筋肉量や体力を守り、日常生活を元気に送るための体づくりという視点を持つことが大切です。
ウォーキングなら10分、スクワットなら1回からでも構いません。
食事も全部変えようとせず、「朝食にタンパク質を一品加える」「高脂肪のお菓子を毎日から時々にする」といった小さな変更から始めてみましょう!
年齢を重ねた体は、若いころとは違います。
だからこそ、若いころと同じ方法を繰り返すのではなく、今の自分に合った方法へ更新していくことが、50代・60代ダイエットの第一歩だと私は考えています。
よくある質問
50代と60代ではダイエット方法を変えたほうがいいですか?
食事を整え、有酸素運動と筋トレを組み合わせる基本は共通しています。ただし60代では、急激な減量よりも筋肉や体力を維持しながら体重を整える視点をより大切にしたいところです。
50代・60代はウォーキングだけでもいいですか?
ウォーキングは始めやすい有酸素運動ですが、筋肉を維持するためには無理のない筋力トレーニングも組み合わせることが大切です。運動経験が少ない方は少ない回数から始めましょう。
50代・60代は炭水化物を抜いたほうが痩せますか?
炭水化物は重要なエネルギー源なので、自己判断で極端に抜く方法はおすすめできません。タンパク質や野菜なども含めて食事全体を整え、必要に応じて医師や管理栄養士に相談しましょう。
シニアフィットネス・ライター 高橋陽子

